学生の頃から、違和感のある面白くない不思議な漫画があり謎でした。

その一つの答えが先日担当さんと話していたらわかりましたので共有させて頂きます。

不思議な面白くない漫画とは

違和感のある不思議な面白くない漫画、の今回の定義を先に説明させて頂きます。

作者さんに「描きたい」「伝えたい」物がある場合、
表現力や技術力がまだ追いついてなく読者に伝わりにくい=
読者に「面白くない漫画」と認識される漫画が産まれることはわかります。
その作品は、面白さを伝える技術を磨いている最中に産みだされた作品であって、面白さが伝わらない。でも面白さは存在している。のです。そういう漫画はこの世に沢山合って、感受性が同じ方向に敏感な方には伝わって、一部の人が面白いと言っている漫画。
多くの人に、存在するけど届かない面白さを、多くの人にも届くように技術を磨けば、面白くなる漫画。
描き手の何らかの意思を感じるけど、読んで面白くない漫画は「自分(読者)には向いていなかった」だけで普通の漫画です。

そうではなく、何も感じない漫画が存在します。
何を伝えたくて何を描きたくて描いているのか皆目見当も付かない意味のわからない漫画です。
何故そのような漫画が産まれるのか、存在しているのか、本当に謎でした。

作者の描きたい何かがあれば、それが描きたかったんだな。技術不足で伝わりにくいだけで何かは存在する。

その何かが「何も存在しない漫画」が産まれる理由が、先日新しい担当さんと話していてわかりました。

新しい担当さんが出来た話

普段描いているジャンルとは違うジャンルを描かないかと、ご依頼がありました。
(ジャンルとは、少年漫画・少女漫画・青年漫画・BLTLなど、漫画には色々な種類が有り、表現のルールや基本が異なります。)

描いたことも描きたいと思ったこともないジャンルの依頼でしたので、素直に「描きたいものが得に浮かばない」旨を伝えましたら
「こちら(編集部)でご用意します」と言われました。

1ヶ月ほどで、プロット(あらすじ)とキャラクター設定が届きました。
漫画家が「こんな漫画を描きたいです」と、担当さんに送る企画案のような物が、編集部から描き手に届いたのです。
「こういうジャンル方向性の作品を描きませんか」と。
それは多分、人気の傾向性、売れている物を分解して再構築、本屋さんや配信会社などの要望を入れ込んだ「設定のあらすじ」でした。

なるほど。
こうやってつまらない、面白くない、描き手の意思のない、描き手の見えない不思議な漫画はこの世に産まれていくのか、と思いました。

提示されたあらすじから面白い漫画が出来ることもあり得ます。
それは漫画家か原案者に「伝えたいこと」や「描きたいこと」の明確なイメージがあって、意欲的に取り組んだ場合です。

「つまらない設定だな。でもこれを描けばお金になるし」と、企業のPR漫画のような、描き手の意思のない状態で産みだされた漫画が、あの違和感のある不思議な熱量を感じられない漫画だったんだな、でした。

合う作家がやれば、上手く行くこともあると思います。
が、劣化版ディズニーが産まれるな、と個人的には思いました。
ディズニーはこの世のありとあらゆる最高峰の技術と能力を集結させた、大衆向け作品です。
その何よりも尖っている「技術・能力」がない、劣化版大衆向け作品は、何もないのです。

尖っている、突出している、他と違っている、「個性」に人は引きつけられます。
進撃の巨人は、巨人の設定世界観が個性的で尖っていますよね。次回への引きも上手すぎる。
鬼滅の刃も「欠損」が尖っていますね。他にも多くの個性の集大成。
スパイファミリーは一見尖っていないっぽいのに、圧倒的「漫画力(漫画の演出力やデフォルメされた画力)が尖りまくっています。
ハイキューならキャラの魅力と情熱と漫画力が突出しています。

そして作者の「伝えたいこと」キャラの格好良さでも、家族愛でも、君は孤独じゃない。でも何でも良いです。作者が読者に届けたいと本気で思っている何かは、本当に届きます。

ゲルニカを見て嫌悪を感じるように、伝えようと作者が念じて描けば、読者は必ず受け取ってくれるんです。
それを信じて漫画家は漫画を描いています。読者に「届け!」と。

その意思や情熱がない漫画を読んでいると、違和感を感じます。
不思議な面白くない漫画はそうやって産まれる。

違和感のある、書きたいという情熱のない不思議な面白くない漫画は悪なのか?

お金を貰って、漫画の練習をするには最適だと思います。
ので、この編集側がプロダクションする企画提案型システムは、存在する意義があると思います。
作者の描きたいものと合致していれば、双方が意欲的に取り組めて相乗効果のある作品ができあがります。
1+1=2ではなく、∞無限大という奇跡です。
が、情熱的な人は、はじめから情熱的に自発的に目的地目指して勝手に、誰に指図されることなく進んでいくのですよ。そして同じ速さで走っている人と偶然であって、その奇跡のような片割れと、更に目標への駆けっこを楽しんで目的地に進んでいく場合が、∞無限大、その場合出会ったことが奇跡であって、作品は結果です。出会わなくても違う形で作品は出来上がる。

ですので、多くの場合は、3+2=2.5という、低い方に引っ張られる、中和される結果になるから、一人でやるより劣化したものが出来上がる可能性があります。
お互いに意思や熱意がないからです。合意に決定権があるからです。熱意や信念、人間としての感情に決定権がないのです。

ではこれはどういう人の救済になるシステムなのか。
漫画制作に、挫折や立ち止まってしまった、何らかの壁がある方は、こういうタイプの、一人ですべてを背負いこまなくていい、共同で漫画制作できる環境はリハビリに最適だと思います。
だからこのシステムは、何かに迷ってしまったいる期間の、漫画家救済システムとして素晴らしいと思うので存在し続けてほしいなと感じました。

が、失敗すると違和感のある不思議な面白くない漫画が出来上がるんだな。でした。

蛇足:面白くないを改善する方法

描きたいこと・伝えたいこと・が置いていかれて、あらすじや設定を立てられていることが問題だと感じました。

では漫画はどう面白くするのか。

キャラクターが愛されれば漫画は成功です。
だから愛される漫画を書くことに全力を注げばいい。
そのためには、キャラのためにストーリーや設定を作るのであって、ストーリーのためにキャラを作ってはだめだと思います。

ただ、インベスターZのような、「伝えたいこと」を伝えるために、
「薄い何も無いテンプレートなキャラクター」という漫画の作り方もあるので、
作者がその作品をなんのために作るのかによって、キャラクターは必ずしも愛される必要はありませんので、何のために描くかが大切ではあります。

ので、企画のジャンル感を全面に書いて、プレーンなキャラクターとして押し通すのもありだとは思います。面白い漫画はできませんが、新世界より、のようなオチが秀逸でストーリーが立っている作品には、立ったキャラクターを立てないことが、より一層ストーリーの魅力を引き立てたりします。
世界観を描くイメージです。ジブリの雰囲気などが世界観を描くというイメージがわかりやすいかもしれません。

キャラクターを描くのではなく、そのジャンルや世界観を描くに徹底するか、キャラを愛されるように作り込むか。まずどちらかを選択して、編集さんと話し合いかしかないと思います。
が、漫画家はコミュ力低いので、会話で伝えられなかったら、メールで考えをまとめて送って読んでもらって、その後に対話。などしていかないと、
そもそもが他人とわかり合うのはお互いが歩み寄ろうと考えていない限り難しいですし、
漫画を描く人間の認識と、漫画を書いたことのない人間では、経験値の差の溝がやばすぎて、
同じ言葉が同じ意味や概念をなしていないことがありますから、(編集側もまた然り、漫画家はわかってくれないと感じてしまうことでしょう)無理だと感じたら、断るのも勇気だと思います。
難しそうだけど挑戦しがいがあると感じるのであれば、是非チャレンジしていただきたいです!
誰かとの共同作業は無限大の結果になる可能性を秘めていますので。

まとめ

描きたいという意思のない漫画は、読み手に違和感を与えるらしい。

編集側が企画案を出してくる漫画は、お金をいただきながらの漫画の練習・リハビリには最適かもしれない。

個人的には、描きたいものがある場合、描きたいものを描いたほうがいいし、
描きたいものがなくても漫画を描きたいなら、コミカライズの作画担当もありかなです。
設定企画を持ち込まれる型は、自分の漫画を描きたいけど、行き詰まっている場合有りです!
それ以外だと、無駄な人間関係の衝突が生まれる種が追加されてるなと感じました。コミュ力高い人向けで、漫画を描く以外の別の整理整頓能力が求められていて、難しいお仕事だなと感じました。

みなさんが毎日楽しく漫画を描ける環境に、どんどん近づいていっていることを願っています!今日も楽しく漫画を書いてくださいね!

今回例に取り上げた漫画は、1巻は漫画家目指してる方は、漫画を描く教養として絶対に読んだほうがいい作品です。

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インベスターZは、人生で一番インパクトのある漫画の描き方が、この作品でした。
漫画家が作画をすべて外注(笑)そんなのあるんだ(笑)

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